課題責任者の挨拶
東北大学金属材料研究所 久保 百司
我が国における科学技術の振興、産業競争力の強化、国際貢献、安全・安心の国づくり等を実現するため、スーパーコンピュータ「京」の後継機となるポスト「京」の開発が平成26年度よりスタートしています。ポスト「京」においては、国の基幹技術として国家的に解決を目指す社会的・科学的課題に戦略的に取り組み、我が国の成長に寄与し、世界を先導する成果を創出することが期待されており、「ポスト「京」で重点的に取り組むべき社会的・科学的課題についての検討委員会」において、平成26年8月に9つの重点課題が採択されました。さらに、ポスト「京」で新たに取り組むチャレンジングな課題として4つの萌芽的課題が選定されました。その萌芽的課題の中の一つである「基礎科学のフロンティア-極限への挑戦」のテーマとして、平成28年6月24日に本研究課題「基礎科学の挑戦-複合・マルチスケール問題を通した極限の探求」が採択され、平成28年8月1日から具体的に本研究プロジェクトがスタートしました。本課題は、平成28年度~平成29年度の調査研究・準備研究を経て、平成30年度~平成31年度に本格的実施が行われます。
本課題では、強靭な国土や社会の構築、効率的なインフラ管理のための非破壊診断、大型構造物や実用材料の高耐久性、わが国の産業競争力強化、宇宙や地球深部などの極限環境、あるいは大型実験施設の極限条件データなど、人類のフロンティアの開拓を目標に、材料の破壊、地震、大気・海洋の変動、火山噴火、マグマ、観測困難な極限物性など「極限を探求する科学」に関する課題の解決を目標としています。スーパーコンピュータ「京」を用いた計算科学シミュレーションや最先端大型実験施設による実験・観測の大きな成果にもかかわらず、いまだ答えの出ていない極限を探求する基礎科学の難問に対して、大規模数値計算を軸とした学際連携とポスト「京」のみがなし得る新しい科学の共創により、全く新しい視点に立った学術的な発見、人類の自然観を一新するような知見の獲得、さらには新しい学問潮流の形成を実現していきます。
本萌芽的課題の実施にあたっては、東北大学金属材料研究所を代表機関として、4つのサブ課題を設定し、研究を推進しています。具体的に本萌芽的課題は、サブ課題A:破壊とカタストロフィ(サブ課題代表機関:東北大学金属材料研究所)、サブ課題B:相転移と流動(サブ課題代表機関:東北大学大学院理学研究科)、サブ課題C:地球惑星深部物質の構造と物性(サブ課題代表機関:理化学研究所)、サブ課題D:量子力学の基礎と情報(サブ課題代表機関:東京大学物性研究所)から構成され、また多くの協力機関の研究者の方々と連携しつつ、研究を推進してまいります。
引き続き皆さまのご協力とご支援を頂けますよう宜しくお願い申し上げます。
課題責任者 東北大学金属材料研究所 教授 久保百司